働き方

「わからないことがわからない」ってどういうこと?

働いているとき、何度と無く耳にした言葉が「わからないことがわからない」。
これって一体どういう意味だろうか?
なぜ「わからないことがわからない」状態に陥ってしまうのだろうか?
「わからないことがわからない」状態にならないようにするためにはどうしたらよいのだろうか?

「わからないことがわからない」の具体例

あなたも一度は聞いたこと、あるいは自覚したことがあるのではないか?
私も何度も経験がある。

そこで「わからないことがわからない」という状態がどんなものか、具体例を挙げて説明する。

どこがわからないかわからない

例えば、仕事に詰まっていて、先輩がこんなふうに声を掛けてきたとき。

G先輩
G先輩

どこがわからない?

……この質問、困るんだよね。毎回固まってしまう。
最近は適切に答えられるようになってきたものの、未だにこの質問をされるとドギマギしてしまう。
だって、どこがわからないかわからないんだもの。

とにかく今の作業がうまくいっていなくて、スケジュールに遅れそう。
でも、なんでうまくいかないのかわからない。どうすれば今の状態を解消できるのかわからない。
つまり、どこがわかるようになればうまくいくのかわからない

自分が何をしたいのかわからない

また別の例を考えてみよう。
あなたが今の作業について先輩に相談しようとしたとする。すると先輩がこう言った。

G先輩
G先輩

何を聞きたいの?

まさかの逆質問だ。
つい(こっちの質問に答えてくれよ)と思ってしまう。
わからないことがあって相談ないし質問したのに、逆に質問されたら混乱してしまう。
しかし冷静になって自分が相談した内容を考えてみると、先輩の発言は当然のものだったと発覚するケースが多い。
というのも、自分が何を聞きたいのかよくわかっていないからだ。
そんなことあるわけないだろう、と思うかもしれないが、これが存外よく発生する。
特に以下のような言い方をしていたら要注意だ。

  • 「ここがよくわかりません」
  • 「○○がうまくいきません」
  • 「今△△になってます。☓☓してたんですけど、本当は□□のはずで、でも……」

これらはどれも、相談相手に何をして欲しいのか伝えていない
相談された先輩からしたら「よくわかりません」と言われたところでどう回答するのが適切かわからないのである。

判断基準がわからない

私が働いていたとあるチームでは「わからなければ聞く」という方針があった。
同時に「クローズド質問を心がけること」という方針もあった。
これらの方針は一見すると正しいのだが、扱いようによってはダブルスタンダードになってしまう。

わからないところがあったから聞きに行くと

G先輩
G先輩

質問の意味がわからない。クローズド質問してっていつも言ってるでしょ。

と一蹴される。

今度はクローズド質問しようと、懸命に質問内容を考える。気づけば一、二時間経っており、待ちくたびれた先輩がやってくる。

G先輩
G先輩

今どんな感じ?

わたし

ここがわかりません。

G先輩
G先輩

いやもっとはやく聞きに来てよ

……(どうすればいいんだ)

いつもこんな調子である。
もちろんずっと質問内容を考えている私も悪い。
「早く相談してほしいのか、正確に相談してほしいのか、どっちなんだ!」と思ってしまう。
2つのルールによって板挟みになっている。
そりゃもちろん両方なんだろうけど、うまくいかない。

これは結局、判断基準が曖昧ということだ。
「クローズド質問しろという要求だが、いつまでも質問内容を考えていては業務が進まない。10分考えてわからなかったら現状をそのまま伝えよう」という判断ができないのである。
丁度いい塩梅がわからない、優先順位がわからない、目的がわからない。
だから、2つの相反する(ように見える)ルールを提示されるとどちらかが正しくてどちらかが間違っていると思い込み、混乱してしまう。

つまり、「わからないことがわからない」ってどんな状態?

端的に述べると「疑問点・不明点を具体化することができていない」状態のことだ。
なにか困っているんだけど、それをうまく言葉にできない。
どうにもうまくいかないんだけど、どうしたら解決するのかわからない。
それが「わからないことがわからない」という状態だ。

さらに言えば、「問題を定義できていない」ということ。
後で詳しく述べるが、「わからないことがわからない」というのは問題解決能力と直結する。
問題解決において真っ先に行うのは「問題の発見・定義」なのだが、これがうまくいっていないと「わからないことがわからない」状態になってしまうのだ。

ここでいう「問題」とは「現状と理想とのギャップ」のこと。「問題解決」とは「現状と理想とのギャップを埋め、理想の状態に近づけること」だ。
問題を定義できていないというのは、現状やあるべき姿(=理想)を把握していない、とも言いかえられる。

「わからないことがわからない」というのは、 自分の状態、利害関係者(ステークホルダ)、周辺環境、あるべき姿、これからやるべきこと、その手順・目的・全体像などを把握していないということだ。

「会議で使う資料を作成する」という業務ならば、

  • 会議の目的
  • 資料を作成する目的
  • 資料に書くべき内容
  • 資料のフォーマット
  • 完了期限
  • 承認者

などが「あるべき姿」として抑えておくべき点だろう。これらの情報を抑えているかどうか、実行可能かどうか、どのように実行するか、承認者の状況は、といった点を調べていくと「現状」に行き当たるわけだ。

業務を実行する上でこれらの情報は必要不可欠である。
また業務の実行に先立って調べておくものであるから、これらの情報は「前提条件」である。
従って「わからないことがわからない」状態とは、「前提条件を把握していない」状態とも言える。

「わからないことがわからない」状態は業務知識もスキルもほとんど持っていない新人なら当たり前に起きる現象だ。

なぜ、わからないことがわからなくなってしまうのか?

先の述べた通り、「疑問点・不明点を具体化できていない」「問題を定義できていない」「現状やあるべき姿を把握していない」「前提条件を把握していない」と「わからないことがわからない」状態に陥る。ではなぜ問題を定義できていなかったり、前提条件を把握していなかったりするのだろう。

全体像(概要)を把握していない

先の例では、会議資料を作成するためにいくつかの情報が必要である、と述べた。
即ち前提条件のことだ。
業務を熟知している人なら当然前提条件も抑えている。
前提条件を把握しなければならないことも知っているし、どうやって情報収集すればよいかも知っている。一人ではわからないとしても、誰に聞けばよいか、どんな資料を参照すればよいか知っている。
逆説的に、業務をあまり知らない人は前提条件がわからないといえる。

これは業務に限った話ではない。
ブログ作成にしろ旅行にしろゲームにしろスポーツ観戦にしろ、そのジャンルについてよく知らない人は、実行方法がわからないし楽しみ方もわからないのだ。
野球のことを全然知らない人に野球の話を振っても、前提となる知識がないから疑問すら生じない。
精々「野球って面白いの?」と抽象的な質問になるか、「君は野球やってたの?」と個人的な質問になるかのどちらかだろう。

つまり、対象について全体像を把握していないと話が進まないのである。

手順を把握していない

全体像を把握することと同じくらい重要なのは「手順を把握すること」である。
手順というのは、やるべきことを細分化したうえでその優先順位を設定し、実行順を決定することでわかる。
つまりやるべきことがはっきりする

やるべきことがはっきりしていなければうまくいかないというのは当然の話だ。
しかし、やるべきことをはっきりさせるというのは意外と難しい。
業務を細分化や優先順位の決定には、ある程度の経験値が必要だからである。
そもそも「やるべきことをはっきりさせてから仕事しよう」と意識していないことも多い。

ではやるべきことがはっきりしているとはどんな状態か。
会議資料作成を例にすると、
1.会議の目的・会議参加者・会議日程を調べる
2.資料作成の目的・資料のフォーマット・資料のボリュームを調べる
3.資料に書く項目を洗い出す
4.内容を埋めるために必要な情報を調べる
5.4の情報を取捨選択する
6.本文を書く
7.見直す
8.上位者の承認を得る

より確実にするなら、2と3の間、3と4の間で上位者との合意を得たほうがよいだろう。
その他、会議室を抑えたり印刷する作業も必要か確認したほうがよい。
こうして、段取りを立てるのが肝要である。

全体像を把握することと、手順を把握することの違い

全体像を把握することは抽象化を進めていくアプローチであるのに対し、手順を把握することは具象化を進めていくアプローチだ。
相反することのように思えるが、両方必要である。
全体像を把握していないと、最終的に出来上がったものが目的とそぐわないものになる。
手順を把握していないと、そもそも完成しない 。

質問することが怖い

原因は知識に関することだけではない。
心理的な側面も検討する必要がある。

質問すること自体に恐怖を覚え、業務遂行がままならない人がいる。
「こんな質問をして怒られないだろうか」
「質問するタイミングが遅すぎないだろうか」
「自分の無知・無能を知られたらどうしよう」
「人格否定されたらどうしよう」
「なんて質問したらいいかわからない」

誰もがこれに近しいことを考えたことはあるのではないか?
この考えが強くなり、恐怖が義務に勝ってしまうと質問を避けるのだ。
特に自信の無い人はその傾向が強い。
「この程度のことは人に聞くべきではない」「自分で解決しなければならない」とそれらしい理由をつけて、自分の尊厳を守ろうとする。
恐怖や焦りが意識に上らずに、つまり無意識のうちに恐怖心が勝り「まあいいや」で作業を進めてしまうこともある。
最終的には疑問や課題が積み重なって、自分がなにをしているのかさえわからなくなってしまう。

そもそもやる気がない

業務を遂行する気がない、調べようとすらしていないのならば何も知らないのは当然である。

こういう人はわからないことがわからないとかいう以前の話だから、ここではあまり深堀りしないことにする。

環境が整備されていない

内的要因だけでなく、外的要因も考慮しなくてはならない。
極端な話だが業務に関する資料が全く残されていなければ、何も調べようがなく途方に暮れてしまう。

先輩に質問して「そのくらい自分で考えろ」「そんなこともわからないのか」なんて言われた日には、失望して退職願を書き始めてもおかしくない。

ただ、その先輩も答えに窮してしまったと考えられる。
自分が想定していない質問をされたら返事が難しいのは当然だ。
素直に「俺もわからん」と答えるのも憚られるから「そのくらい自分で考えろ」と言ってしまうのだ。
環境が整備されていないと、このような事態がしばしば発生する。

また、もし仮に先輩が業務を完全に理解していて、どんな質問に答えられるとしても、本当になんでもかんでも質問されたら溜まったものではない。
質問に答えるには時間を使うし、頭を使うのである。

後輩もなんとなくそのことがわかっていて、相談しにくい。
忙しそうにしていたり、イライラしていそうなときはなおさらだ。

わからないことがわからない状態を防ぐために用意したほうがよいと思われるものを列挙する。

  • マニュアル
    業務の手順書。具体的であるほどよい。
  • 業務プロセス標準
    マニュアルよりも適用範囲が広い文書。
    手順というよりルールを網羅したもの。
  • 業務依頼書
    業務の目的、概要、担当者、成果物、期日、マイルストンなどが書いてあるもの。
  • WBS
    部署・チーム内が抱える業務を網羅したもの。
    各業務の担当者、期日、進捗などを一元管理するためにマネージャが作る。
  • メンター制度
    年齢・社歴の近い先輩が、新入社員や若手社員をサポートする制度。
    気軽に相談できる相手がいると、新入社員や若手社員は心が楽になる。
  • セミナー
    社員の能力向上を促進する講習会、演習。
    特に問題解決、論理的思考を扱うセミナーがあるとよい。
  • 親睦を深めるイベント・クラブ活動
    メンター制度と同様、気軽に相談できる相手を作るための場。
    年齢や立場に差があると新入社員は臆してしまうので、できる限り年齢や立場が近い人が集まる場を用意したい。

「わからないことがわからない」を解決するためには

「わからないことがわからない」状態を解消するための手法をいくつか紹介する。
業務遂行に直結する直接的な解決法、自分の力を向上させる根本的な解決法に分類している。

今まさに仕事で困っているというなら直接的な解決法、今は問題ないがこれから発生しそうというなら根本的な解決法を参照されたし。

直接的な解決法

「わからないことがわからない」の原因に対して、解決するための手法をいくつか考えてみた。
業務はPDCAに則り【段取り】→【実行】→【確認】→【改善】という手順で進めていくものと仮定して、どのプロセスでどの手法を使えばよいかわかるようにしてある。

もし手法の適用が難しかったなら、それ自体が次の行動の指標になるはずだ。
たとえば、前提条件を考えてもわからなかったなら、業務の目的を質問する。
業務を細分化できなかったなら、具体的な手順を質問する。といった具合に。

  • 業務に着手する前に前提条件を整理する【段取り】
    前提条件とは、「業務の目的(なぜ)」「業務が発生した背景(なぜ)」「成果物(何を)「ターゲット(誰のために)」「期日(いつまで)」などだ。
    5W2Hで考えると推測しやすい。
    「なぜ」がふたつあるのは、目的因(あるべき姿)と始動因(きっかけ)を指している。
  • 業務に着手する前に疑問点を整理する時間を設ける 【段取り】
    疑問を残したまま作業をすすめるのはよくない。
    誤りが増えるし、上司との意思疎通もうまくいかなくなるからだ。
    できる限り早い段階で謎は解消しておこう。
  • 業務を細分化する 【段取り】
    業務はいくつかの手順に分割し、さらに3段階、4段階とレベル分けして考えるとよい。
    着手しやすくなるし、問題点がどこにあるのかも把握しやすくなる。
  • 手順のひとつひとつに「これで次の手順に進める!」という判断基準を設ける【段取り】
    業務を細分化したあと、それぞれに判断基準を設ける。
    その判断基準を満たしたときだけ次の手順に進み、満たさなければ「問題が発生している」と考える。
  • 段取りに時間をかけすぎない【段取り】
    段取りに時間をかけすぎると期日に間に合わないし、段取りをどこまで行うか、という難問に突き当たってしまう。
    業務に慣れていない人が完璧な段取りなどできるはずはない。
    「こんなもんで大体できるようになるだろう」というレベルに仕上げたら、さっさと確認してもらおう。
    「段取り立ててみたんですけど、過不足はないですか?」と聞けばOKだ。
  • 作業が進まないとき、一定時間経過したら質問する(というルールを設ける)【実行】
    たとえば、10分間に一文も書けなかったら質問する。
    これはわからないことがわからない状態を直接解決するというより、質問力を鍛えるアプローチである
  • プロセスを標準化しておく【改善】
    頻繁に発生する業務、定型業務ならば標準化できる。
    次に何をすべきか忘れたらマニュアルを見返すという習慣を付けると、人に聞かなくても作業を進められるようになる。
    ただ、業務にある程度慣れてきてからでないと自分で作るのは難しい。
    作っている人がいたらありがたく頂戴しよう。
  • 業務の全体像がわかる資料を入手するor分かる人に聞く 【段取り】
    全体像がわかる資料というのは「〇〇概要」とか「△△構成図」といった類のもの。
    マニュアルは具体化されたもの、概要は抽象化されたものだから真逆の性質。
    適切な抽象化はかなり難しいから、自分で作ろうとしないで貰うか聞くかしたほうがよい。
  • 状況別に「質問できる人」を用意しておく 【段取り】
    会議の進め方だったらこの人、開発業務だったらこの人、コミュニケーションだったらこの人という風に専門家を見繕う。

また、親切なひとならことあるごとに「わからないことがある?」と聞いてくれる。
せっかく聞いてくれたのだからなにか答えなければ、と思うかもしれないが、無理やり質問を捻り出したって意味はない。
だったら「今はありません」と答えておけばよい。
作業を進めていくうちに疑問が生じたらその都度聞けば良い。そのことを仄めかす意味でも「今は」と付け足しておこう。

根本的な解決法

上記のテクニックは言葉の上では簡単だが、実践することは簡単とはいえない。
疑問点を考える時間を設けたところで何も浮かばないかもしれないし、業務をどう細分化したらよいかわからないかもしれない。
そこで、「わからないことがわからない」状態を発生しにくくする、根本的な解決法をいくつか紹介する。
つまるところ、全て「理解力を高める」方法である。

「無知の知」を知る

無知の知とは古代ギリシャの哲学者ソクラテスが提唱した概念で、「『知らないことを知らない人』よりも『知らないことを知っている人』の方が優れている」という意味である。

『知らないことを知らない人』はまさしく「わからないことがわからない人」のことだ。
『知らないことを知っている人』とは疑問点・不明点を明確に表現できる人のことだ。

すでに述べたように疑問点・不明点を具体化できないのが「わからないことがわからない」状態である。
その状態はよくない、疑問点・不明点を明確にしよう、問題を明らかにして解決に近づけていこう、という考え方が無知の知であるわけだ。
従って無知の知とは「わからないことがわからない」状態から意図的に脱しようとするマインドセットであると言える。

論理的思考力を鍛える

論理的思考とはものごとの因果関係を考えたり、構造を考えたりすることである。
論理的思考はしばしば「三角ロジック」や「ピラミッドストラクチャー」や「MECE」といったフレームワークで説明される。
どれも論理的思考に役立つツールのようなものだ。
共通しているのは「主張」と「根拠」をはっきりさせよう、そのうえで因果関係を吟味しよう、という考え方である。

「主張」というのは自分の言いたいことを意味し、「根拠」というのは主張を裏付ける出来事・データを意味する。

よく「何が言いたいのかわからない」と言われる人は「根拠」しか説明していないことが多い。
「なんでそうなるの?」と言われる人は「主張」しか説明していないことが多い。
自分の考えをより正確に伝えるためには「主張」と「根拠」はセットで考えることが肝要だ。
「主張」と「根拠」が適切に組み合わさっていると、合理的で説得力があると見做される。

論理的思考は相手に自分の考えを伝える力を養うことができる。
何か困ったことがあったとき、相手に何を質問すればよいのかわかるようになるだろう。

また因果関係や構造を考えるのだから、業務を細分化するときに役立つ。
この作業は更にいくつかの作業を内包している、この作業が終わったら次の作業に着手できる、といった考え方は論理的思考による。

批判的思考力を鍛える

批判的思考とはものごとの結論・根拠・前提を疑い、より確からしい結論を導こうとする考え方である。
言葉通りに受け取るとネガティブな意味になってしまうが、実際には現状を打破しようとか真実を究明しようといったポジティブな意味である。

批判的思考のガイドラインとして以下が挙げられている(他にもあるが割愛)。

  • 問題を定義する
  • 根拠を検討する
  • バイアスや前提を分析する
  • 感情的にならない
  • 楽な解決に固執しない

まず「問題を定義する」というのは「わからないことがわからない」状態を解決することに直結していることはおわかりだろう。
次に「根拠を検討する」ことや「バイアスや前提を分析する」ことは論理的思考によって導き出された結論を見直すことを意味する。
「感情的にならない」というのは質問するときの恐怖心を退けることを含む。問題を解決するためには冷静な分析が必要、というわけだ。
そして「楽な解決に固執しない」というのは今ある解決法や自分で考えた解決法を再検討すべき、という意味である。ある解決法が以前通用したからといって今回も通用するとは限らないのだ。

批判的思考は論理的思考や問題解決をより効果的に行うために役立つ。
さらにいえばあらゆる思考・合理的判断を補強する意味合いを持つ。
近年の学校教育・ビジネスで重要視されている概念だから、ぜひ身につけて欲しい。

問題解決能力を鍛える

冒頭で触れたとおり、「わからないことがわからない」というのは問題解決能力と直結している。
であれば、問題解決能力を鍛えれば「わからないことがわからない」は発生しにくくなるというのは当然の帰結だ。

問題解決能力は論理的思考力や批判的思考力に支えられている。
批判的思考力によって問題を正確に定義し、論理的思考力によってよい解決法を導く。
再び批判的思考を用いて、その解決法が妥当であるか検討する。

問題解決、論理的思考、批判的思考は全てセットで考えるといいだろう。
それぞれ身につける方法があるのだが、どれかひとつだけだと使う意味がわからなくなったり、頭が凝り固まってしまう。

さらに発展させると、上位者の決定を退ける、組織のルールを変える、といったことまで可能になる。
個人レベルの問題解決ではなく、組織レベルの問題解決として考えるのだ。
ただ、ここまでいくと私の手に負える話ではないため省略する。

メタ認知能力を鍛える

メタ認知とは、わかりやすくいえば「自分が何を考えているのか理解する力」のことだ。
自分が何を考えているのか理解できるようになれば「今わからないことがわからない状態なんだな」と自覚することができる。
さらに「わからないことがわからない」状態に至るまでの思考プロセスも理解できるようになり、抜本的な解決ができる。

わからないことがわからない状態は、頭の中が整理されていない状態とも言える。
メタ認知はある種の思考の整理術なのだ。

自己調整学習を行う

自己調整学習ははメタ認知を応用した学習方法だ。
アメリカの教育心理学者ジマーマンは自己調整学習を「学習者自身が自らの学習を調整しながら能動的に学習目標の達成に向かう学習」と定義している。

自己調整学習は「自己効力感」の概念に依拠している。
自分の状態を観察したり、目標のレベルを調整したりしながら目標達成に近づけていく。そして自らの力で目標を達成することで、「自分はやれる!」という認識を強める。こうして自己効力感が高まり、学習意欲が湧いてくる。するとさらに高い目標に向かって邁進する。
このループによってどんどん知識・技術を身に着けていこうという学習スタイルである。

高い動機づけを維持しながら次々と知識を吸収できるため、早期に「わからないことがわからない」状態が解決する。
さらに自己調整学習は問題解決と近しいプロセスであるため、問題解決能力も向上する。
目標を達成し、かつ自らを進化させるという一石二鳥の学習方法なのである。

「わからないことがわからない」な部下を持つ人へ

「わからないことがわからない」状態は、業務知識もスキルも乏しい新人なら当たり前に発生しうる。
それを「わからないことがわからないなんてダメ」「そのくらい自分でなんとかしろ」と一蹴するのは怠慢でしかない。

  • なぜわからないことがわからない状態が発生しているのか。部下、自分、周囲の環境をよく観察し、原因を探ること。
  • そして、どうしたら解決するのか検討すること。
  • その解決策を実践し、結果を分析すること。
  • うまくいってもうまくいかなくても記録に残し、次に活かすこと。

こうして部下を救ってあげてほしい。
部下の抱える困難を解決してやる上司こそ尊敬されるし、成果も挙げられるだろう。
さらに部下はそんな上司を見て「こうやって解決すればいいのか!」と学ぶ。
その部下は自力で問題解決できるようになるし、人に教えることもできるようになる。
するとチーム全体のレベルが上っていく。
部下にとってもあなたにとってもいい事ずくめであるはずだ。

「わからないことがわからない」な人へ

私自身「わからないことがわからない」人間だった。
今もそうかもしれないが、以前よりはマシになったと思う。

「わからないことがわからない」状態というのはある種の絶望感があるだろう。

「わからないことがわからないなんてどうかしてる」
「俺は自分のことすらわからないのか」
「一体どうしたらいいのか検討もつかない」

私も数年前はこんな考えを持っていて、すっかり自信を喪失していた。
しかし「わからないことがわからない」というのは誰しもが通る道である。
例え同期がすんなり仕事で成果を挙げているように見えても、一度はこの壁を乗り越えているはずだ。

あなたが特別劣っているわけじゃない。
ただ、自覚することが難しいために、解決法を知っている人が少ないために、誰も教えてくれないのだ。

例え上司に「わからないことがわからないのはおかしい」と言われたって、心のなかでは「そんなもん普通だ」と強気で構えていればよい。
上司は長年その業務をやっているから当たり前に実行できるだけで「わからないことがわからない」時期があったはずなのだ。
ただそのことを忘れているだけだ。

いずれあなたにも「わかる」日が来る。
そう信じて今していることを続けてほしい。

この記事があなたの自信を取り戻す一助となることを祈っている。

ABOUT ME
gonzares
27歳ITエンジニアであり提督でもある。 彼女いない歴=年齢である理由を真剣に考える。 趣味は読書・ゲーム・ネットサーフィン等、インドア派。 こっそり小説を書く練習をしている。